「Be my baby」-06 ------------------------------------------------------------------------ カイトは素直にジンの胸に体を預けていた。 眠たげに睫をふせて、ジンの心音を聞く。 トクン‥‥トクン‥‥ その響きは、陽の光をたっぷり含んだコットンのように心地よく 本当に眠気がさしてくる。 今日はいろいろありすぎて‥‥ねむ‥‥。 「お子様はおねむの時間か?」 カイトの頭に手を添えたまま、親指で優しく耳をくすぐりながら ジンが言う。その規則的な動きが、さらに眠気を誘う。 またそんな事、言ってるし‥‥。 聞こえない振りをしていると、軽く顎を持ち上げられる。 う‥‥ん、眠いのに‥‥ うっすらと非難の色をのせて、重い瞼を細く開くと ジンが真っ直ぐに自分を見つめている。 その視線を吸い込んで、瞳の奥が痺れる。 唇が触れる。 ちゅっ‥‥くちゅっ‥‥ちゅちゅっ‥ 小鳥が果実をついばむように、徒な音をたてる甘い口付け。 「‥‥上に行こうぜ」 カイトは答えない。 ‥‥さっきまで、あんな子供扱いしてたくせに‥‥。 無神経に傷つけて、ガキ扱いして、ベッドに誘って。 もう俺‥‥ジンさんに振り回されてクタクタですよ。 ゆるゆると頭を振って顎に添えられたジンの指を振りほどくと 再び胸にもたれかかって動かない。 もう少し、このまま‥‥‥‥ 「カイト‥‥‥‥焦らすなよ‥‥」 絹の髪に顔を埋めながら、囁くジンの声が熱い。 焦らす‥‥? そんなつもりはないけれど、そう思ってくれるなら 都合がいいや。 ジンさんも、少しは俺の気持ちを‥‥。 「‥‥って、何すんですかっ!!!」 「‥‥何って‥‥ダメなのか?」 「‥‥‥‥っ!!」 ジンは間の抜けた顔でカイトを見ている。 その手は、今まさにカイトのジーンズのボタンにかかっていて カイトが身を起こしても、手を離す気はないようだ。 「何だよ、お前がここでいいって言うから」 「‥‥言ってませんっ!!」 乱暴にジンの手を振り払う。 「何なんだよー。まだ怒ってんのか?」 ジンは情けない声で言って、困ったような顔になる。 「そうじゃなくて‥‥こんなところで‥‥」 「だから2階に行こうって言ったんじゃねぇか」 「‥‥‥‥」 「いいんだろ?‥‥ダメなのか?いいんなら、早く上に行こうぜ。 ダメならここでだ」 一体、どういう理屈なんだろう‥‥。 抱かれるために揃って階段を登るだなんて恥ずかしすぎる。 しかし上目遣いにカイトの反応を窺うジンの目が言っている。 ‥‥ダメって言えっ! 「上に‥‥行きます」 カイトは怒ったような声でそう言った。 →Next ------------------------------------------------------------------------ →裏トップ