「Be my baby」-01 ------------------------------------------------------------------------ 一度体を重ねた夜から、ジンは今までの月日を取り戻そうと するかのように、毎夜カイトを求めた。 今日も夜の帳が落ちてカイトが褥におさまると、それが当然と 言わんばかりの強引な腕が抱き寄せる。 夜毎繰り返される快楽の営みに、カイトは後ろめたい表情で抗うが、 耳に熱い吐息を吹き込まれ、背を帯に沿って優しくなぞられると ヒクリと肩を強張らせ、固く目をとじ、あとはジンの為すがままだ。 耳、頬、そして唇。抱き寄せる仕草は性急だが、行為は決して急がない。 吐息を這わせるように浅く口付けながら、カイトの羞恥に気づかれぬよう、 そっと衣服を剥ぎ取っていく。 シャツを乱しながらカイトの体をかき抱く手が、偶然のように胸の突起に 突き当たり、そのまま軽く親指で転がすと思わず首が仰け反って しなやかな筋の隆起が白く露わになる。 もう片方の突起を舌先で捉えたまま、徐々に右手を下に移し 細く張り詰めた体の線を長く楽しみながらなぞっていく。 「‥‥ぅくっ‥‥!」 やっとカイトの中心にたどり着いた指が、その存在を確かめた時 拒絶とも喘ぎともつかない呻きが口から漏れた。 抗いを示そうと膝を内側へ折り込むが、それを予期してカイトの足を 割っていたジンの腰が無理強いでない風を装って自由を奪う。 月が隠れ視界が闇に閉ざされ、しどけなく開かれた白い腿が 暗闇に浮かび上がる。ジンはそれを目に焼き付けながら 抱え上げると、ゆっくりと狭間に顔を埋めた。 「‥‥う‥‥んんっ‥‥」 すでに十分な固さを持ったものを口と指で攻め立てられるが カイトの漏らす呻きはか細い。シーツを固く掴み、血が出るほどに 下唇を噛み締めて耐えるが、すでに思考は停止して、自分が 何を恐れて耐えているのか分からない。 そしてジンが一際強く擦り上げると、小さな叫び声を上げて、 あっけなく果てた。 知らぬうちに反らせた背中を、深々とベッドに沈めて 肩で荒く呼吸をするが、夜がまだ長いことをカイトは知っている。 「カイト‥‥?」 ジンは汗一つかいていない体をカイトの傍らに横たえ枕に肘をつくと スネたように半分枕に埋めたカイトの顔を覗きこむ。 額にそっと触れられて、カイトが細く目を開けるが 瞳だけを動かして、ついと目を逸らす。 ‥‥ジンさんは、いつもこうやって俺のペースを確認してる。 そして俺に意識がある内は、決して自分を曝けださない‥‥。 回らない頭に情けなさだけが浮かび、瞳を固く閉じて ジンの視線を拒絶すると、ジンはその瞼に軽く口付けて 再び体を起こした。 カイトが放ったものを掬い上げ、それを潤滑油として 指に絡ませたまま、蕾に這わせて慣らしていく。 じっと堪えていると、胃がキュッと持ち上がるような刺激に 先ほど精を放ったばかりのカイト自身がもう反応してしまう。 羞恥を感じ、緩慢な動きでゆるゆると首を振るが、抵抗するにも 受け入れるにも、もはや自分の体を統べる手段は無い。 ジンの巧みな動きに易々とカイトは指を呑み込み、熱く揺蕩う中が ゆっくりと押し広げられるのを感じる。 何度か出し入れする内にますます深く入り込み、内壁に沿って 擦り付ける動きだったのが、やがて一つのポイントを攻め立て始める。 「あ‥‥ぁ、‥や‥‥やだっ‥‥」 搾り出したカイトの声に答えて、指は再び緩く内側を這う動きに戻る。 「‥‥んく‥‥ふっ‥‥」 違う‥‥違う‥‥! 指先だけで枕の端をきつく掴み、虚しく言葉を回転させるが口には出せず もどかしく腰が揺れた。それを合図に2本目の指が挿入される。 入り口にだけ軽い圧迫を感じるが、これもいとも簡単に 受け入れて、思いのままに掻き回すのを許してしまう。 気が付けば横這いにされてジンの左手は前に回り、 張り裂けそうな先端の裂け目を、くすぐるように指で分ける。 「ああっ!‥‥ああっ!!もぅ‥‥!」 切なげに眉を寄せ、目のふちが熱に浮かされたように紅く染まっていくのを 時期を計るように見つめていたジンが、やっと腰を上げてあてがう。 甘い衝撃を息を顰めて待つと、すぐにそれは与えられ その一突きでカイトは絶叫し、意識の最後の一片が粉々に砕け散った。 腰をジンの手の中に残したまま、ぐったりと脱力したカイトの肩先に 軽く唇を触れるが、その体はぴくりとも動かない。 そっと前を向かせて壊れないようにしっかりと抱きかかえ 短く欲望を打ち付けると、一瞬肩を震わせてジンは果てた。 「くはぁー‥‥しんどい。我慢、我慢の夜が続くぜ‥‥」 腕からカイトの頭が転げ落ちないように気遣いながら、ジンは ゴロリと仰向けになる。 カイトの淡くピンクに染まった頬を指で弾いて恨めしげに見つめる。 「ぶっ壊しちまったら、修理はきかねぇからな‥‥」 抱き寄せ組み敷いた時から既に、カイトの放つ甘い香りに ジンは狂おしいほど猛っている。 無理にでも体を開かせ、めちゃくちゃにしたい衝動に駆られるが 首筋に軽く舌を這わせただけで苦しげに眉を顰める顔を見ると その切なさ、痛々しさに、心に住む凶暴な獣は鳴りを潜め 愛しさだけが込み上げてくる。 ジンに嗜虐の趣味はないし、一時の悦楽に身を委ねれば 失ったものはもう二度と元には戻らない。 こいつの体はまだ固い。 まぁ指一本触れられなかった時に比べりゃ、今も十分天国だ。 そんでもう少し馴染んできたら、その時は‥‥。 一切の警戒を解き、安心しきった表情で軽い寝息をたてるカイトを しばらく幸せな気持ちで眺めていたが、ふとその表情に陰が差す。 "その時"を、待ってるわけにはいかねぇんだったな‥‥。 先日の他愛の無い、しかしジンの心を占める憂いのキッカケになった 出来事が胸に甦り、ジンは苦しげな目で宙を睨んだ。 →Next ------------------------------------------------------------------------ →裏トップ