by RIKKA-sama
霞草 この世界に、こんなにも。 「あ」 花瓶に生けられた花に、カイトは思わず声を上げた。 フワフワと綿のような小さな花に、まじまじと顔を近づける。そこから流れてきた微かな芳香に、カイトは思わずほわりと顔を緩ませた。 それを見たジンが、不思議そうに首を傾げる。 「どうかしたのか?」 「・・・いえ、なんでも。・・・これ、ジンさんが買ってきたんですか?」 「あー、そうだけど」 それがどうかしたのか、と問うジンは、微笑んだままのカイトの顔を覗き込む。 それに慌てたようにジンから距離をとって、少しだけ恥ずかしそうに、なんでもないです、とカイトは呟いた。 もちろん、それに簡単に納得するジンではない。 「うぉ、気になる。・・・言えー!言うのだー!」 「どっ、何処のガキですか、あんたはっ!」 「ここのガキ。ほれ、言ってみろ、笑わないから」 「べ、別に笑われる心配をしてるわけじゃ・・・」 「じゃ、良いだろ、別に。言えって、気になるから」 子供の駄々を見ている気分になったカイトは、大きく溜息をつく。何を思って溜息をついたのか知っているジンは、ニヤリと笑っているままで。 カイトはジンが、そんな己の反応まで楽しんでいることを、きっと知らない。 わくわく、などと効果音まで背負った己が師匠に、金の髪をいじくりながらカイトはもう一度溜息をついた。 そして、本当にたいしたことは無いのに、と渋々口を開く。 「・・・こんなに小さい花があるんだって、ビックリしたんですよ」 「ふーん。そんなに驚くような小ささか?」 「少なくとも俺にとっては。小さくて、白くて、なんか他の小さな花とは違う感じがするんですよ」 馬鹿にするならしてくれ、と多少拗ねながら呟くカイトは、ジンが興味深そうにその花と自分を見比べていることに気づかない。 ニヤリとジンが、人の悪い笑みを浮かべたことも、分からない。 「ふぅん、可愛いこと言うなぁ」 「なっ!可愛いとかそーいうことを・・・!」 「可愛いだろ。花見て、その小ささに感動したわけだろ?」 間違ってませんけどね、とカイトはジンの頬を引っ張る。 馬鹿にしないで下さい、と怒るカイトの手から自分の頬の肉を取り返して、ジンは馬鹿にしてはいない、と何処か優しい声で言った。 「ハンターとしては、幸せな素質だな。そんな小さなことに感動できるんだ。世界は広いぜ?一度見たら、お前ハンター以外は絶対出来ない」 この世で一番嬉しいことだ、とでも言いたげに、ジンは相変わらず優しい目で呟く。 それに思わず頬を染めたカイトは、ギクシャクとジンから視線を外して白くて小さな花を見つめた。 「ジンさんにも、ありそうですよね、そんな才能」 「おうよ、教えてやろうか、俺がハンターになって一番最初に驚いたこと」 「・・・・何なんですか?」 「あぁ、都会の空が四角い、ってことに俺は驚いたね」 「そんなことですか?」 おぅ、そんなことだ。 笑って言うジンに、カイトは懐疑の目を向ける。 町のダウンタウンで育ったカイトには、四角い空は馴染みのものだ。そんなものに、驚くなんて理解できない。 「俺の故郷のくじら島はな、そんな空を区切って遮るものなんて無いんだよ。見渡す限り海と山。な?空だって見渡す限り広がってんのさ」 「・・・でも、都会はそういうものだって分かるでしょう?」 「そりゃな、知識としては知ってたさ。でも、知識と本物は違うだろ?実際見たら物凄く感動するだろうが。その感動が古い遺跡や素晴らしい建築家の建てた建築物だけで、終わるはずが無いだろ?」 事も無げに言い切るジンの世界は、きっと驚きと感動に満ちている。 その事実に苦笑いするカイトは、でも、この小さな花限定の感動かもしれませんよ、と呟く。 それでもジンは、晴れやかに笑ってカイトの頭を撫でた。 「安心しな。一つ感動したら、後は芋蔓式だ」 経験者は語る、ともう一度クシャリとカイトの頭を撫でて、ジンは花の名前を告げて去っていった。 「霞草ね」 白い小さな花に似合いの儚い名前に、カイトはクスリと笑みを零す。 <六花さんのコメント> 霞草の花言葉は『清い心』。 小さい頃は何にだって感動できたよね!ということで、童心、の意も込めて『清い心』でお願いします。 ジンさんは良くも悪くも子供心を忘れない人、というイメージなので。 カイトさんも然り。子供の目線でも話の出来る人だと思います。スピンたちの故郷のために手をかしたりしてるしね。 仲間たちとの掛け合いは楽しかったよ、ジャンケンとかな・・・(痛)。 う・う・う、和む‥‥癒されるっ‥‥vvvv ホワホワホワワでございますよ‥‥v 修行中&拾われたばかりの子カイトネタ大大好物なんだもの‥‥!! 何が好きってさ、ジンが次々と見せる新しい世界にほとんど呆然と感動するカイトさんが愛しくてたまらんのです。 後のハントで不幸な境遇に陥る彼だけど、こんなにこんなに幸せな出会いがいっぱいあったと思いたいのです(泣) 広大で神秘に満ちた自然と向き合う感動も素晴らしいけど、日常の小さな初体験というのにも大変萌える。 自分以外の人間と食卓について食事をシェアして食べたり、それこそ「いただきます」って言ったりするのも、カイトさんにはとても新鮮な出来事だった気がする。 そんな小さな出来事にドキドキできるカイトさんが好きなのですよ‥‥!(そうですか) でだ。 この小説はそんな私の 白い霞草。豪華な花の添え物になってしまうことも多い、小さく可憐な花の美しさに気付くカイトさん。萌え‥! つーか、顔近づけて香りを確認しちゃうカイトさん、想像するだに激萌えっ!! クンクンとか鼻を動かしちゃったりするんだろうか。 小さな花を凝視して、ちょっぴり寄り目になっちゃってたりしたんだろうかっ! つか霞草より、アンタが可愛いですからーーーッ!! ジンに問い詰められて距離をとったり髪をいじったりとかも、も〜〜! あーこの仕草、すごく新鮮! そうだよね、あんなにキレイで長いんだもの、自分で触ることもあるよな〜とか、もー頭ン中ビジュアルグルグルvv 「なんでもないです」って‥‥! ↑この台詞、すんごいツボだったらしい。スミマセ‥; でね。 そんなカイトさんが大変可愛いお話だったのですが、負けじとジンも可愛いっつーのはどういうことですか六花さん‥!! ウッカリ読者は気付かないと思ったでしょうが、ちゃんと気付いてますよ!! (←?;) 花屋で霞草買うジンってっ!! どういうことですか一体‥‥一体‥‥‥!!!! も〜参った。 花屋で花を買う親父。 そしてそれを、思春期の男のガキと2人暮らしの家に飾る親父‥‥!! モエスギテ タッテ ラレナイヨ ‥‥orz その上、カイトさんにほっぺを抓まれるジンって、どういうことですかっ‥‥!! てっきりフテたカイトさんのほっぺを、ジンがツマんだのかと思ったらっ! グフっ‥‥グフグフグフッ‥‥!(鼻血) どんだけ可愛い親父だよ‥‥!!やぁんもぅどうしよう‥‥(照照) んでそんなガキっぽい顔を見せながらも、ジンはカイトさんの表情の変化を一つも見逃してないんですよね‥‥v (カイトさんは見逃しまくってるけどv) スイマセン、かなり萌えどころ間違ってる気がしてなりませんが‥‥;; でもすごく萌え&ホワホワと和ませていただきましたっvvv 六花さま、素敵小説、ありがとうございました! (050828) →六花様のサイト『CRYSTAL QUARTZ』へ飛ぶ →トップ |