サクラ 恋々 君を想う 思い出すのは 春と出逢いと 涙と貴方。 言葉は優しい歌にのせて 一言で良い、「愛してる」 :::::::春の桜が歌う唄::::::: by KANON-sama 「俺、すっげエ幸せ男。」 いつもの通り、俺を抱きしめて膝に乗せ 彼は さも嬉しそうに顔を緩ませる。 温かな春の桜の木の下で。 二人永久の愛を誓い合った木の下で。 今、貴方の眠る木の下で。 ** 黒い弓が宙を舞う 俺にはその先に闇が見えた。 真っ赤な服、気持ちの悪い音 −−−見慣れたジンさんの顔、じゃない、とてもあせた色の顔。 連れていかれたんだと思った。 幼いあの頃、俺が最も恐れた、闇に。 「カイトっっ・・・!!!!」 でもそれは俺じゃなかった。闇に連れていかれたのは俺じゃない。 「カイト・・・今、助けてやるからな!!俺の力なら、何とか・・!」 貴方だった。 貴方はかすかに手を伸ばし、俺の頬を優しく撫でる。 何故だろう俺の頬は、みるみるアカイロに染まる。 どうして?赤くなる、と言う事は、貴方の手が赤い? 顔が手が腹が足が。ーーー左胸が。 まるで、俺の代わり身となった様に。 そんな色に染まったのは、俺じゃないのか!? 優しく笑ったんだ 俺を見て 本当なんだ、「愛してる」って。 笑ったんだ、本当なんだ(嫌。) 無事でよかったって(いやだ認めない) 笑ったんだっ!!(ジンさんは無事じゃないのに!!!) だから、だからっ・・・・・・・・・・・。 (貴方のいない世界はいらない!) そんなの、絶対信じない。 絶対、助けてみせる。 走った。 走った。 何時間も、もしかしたら何日も。 町という町を這いずりまわった。 そして何処の医者も首を振った。 そして。 この世のすべてが、終わった。 消えてしまった。全部・・・・。 ** 全く勝手なことをして、 お前の笑顔を奪ったのは俺。 もう抱きしめてはやれないけれど。 俺にはお前を失う事程恐ろしいモノ、他にねえんだ。 お前の幸せを、ただ祈ってる。カイト・・・ でも、それは無理かもな。 なんせ、俺がいないから。 ごめんな、「約束」、したのにな・・・・ さらさらさらさらさら。 ** 二人の出逢った木の下に 愛しい貴方の全部を埋葬(うめ)た。 そう、全部。 ただ、サクラの花の花弁を残して。 拭いては落としては失くしては、まだ溢れて止まらない ぐしゃぐしゃに傷ついた少年の泣き顔を残して。 ** 俺にはこれが正しい結末なのかどうかは分からない。 ていうか、多分、殴られる。 でも、俺にはもう、貴方しかいないのです。 さらさら歌う桜の下で 己の金の髪の様に光に輝く切っ先を、左胸に押しつける。 「約束」だから。 ジンさんだけ、勝手に破っちゃだめです。 魚の跳ねた池の様な、鈍い水音が聞こえる。 『今、いきます 貴方のもとへ』 ** こンのバカイト。 そんな傷だらけになって、走りまわって、 疲れたろ? 可哀そうにな ありがとな。 『なんて、言ってやんねえぞ!!!?』 (俺は幸せだったんだ。だからそんな事言うな?) ーーーーーだから・・・・こっち来ちゃ、駄目だーーー もう伝えられない想いをのせて、 唯、サクラは唄を歌った。 こんな身になり尚も心に燃え続ける情熱の恋を。 『泣きながら母親の膝にすがりつく子供の様に、 俺だけを頼ってくれた愛し君へ』 叱るように優しい愛の唄を。 それでも、 サクラの木に君がつけてしまった赤色は、もう誰にも拭えない。 涙が、頬を伝う。 ああ、やっと、泣けた。 「愛してる。」 もう 何にもいらない あなたのもとへ ・・・・貴方しか。 いらない。 さらさら 恋々 あかいろなみだ 桜は今日も歌ってた。 |
管理人、ボロボロと泣きました‥‥。 いただいてすぐ何度も読んで何度も泣き、UPさせていただこうとページを 作っては泣き、出来たページを確認しては泣き、今こうして感想を書きながら泣き‥‥。 悲しくて、優しくて、綺麗な綺麗な小説です。 死を扱っているのに、少しも湿った感じがしないのです。 明るい陽だまりと、桜の花弁の柔らかな感触。 春の風の匂いとか、風が運ぶ花の香り。 薄紅色から濃紅、そして赤色のグラデーションの色のイメージ。 そんな形にならない五感に直接訴えるイメージが、繰り返される言葉によって 優しく優しく伝わってきました。 ジン、カイト、そして二人を見守る桜の唄。 僭越な言い方ですが、モチーフ・構成・エピソードと、すごく上手く書かれているなぁと 思うのです。とても軽やかなのに抽象的に過ぎず、読み応えがあって淀みなく胸に響く。 まるで物語にのせた一編の詩(うた)のように美しい。 言葉のリズムも表現も、悲しく、そして快く胸に響きます。 全編を通じて常に花びらが舞う情景を見るような、優しい桜の唄が聞こえてくるような そんな錯覚を覚えました。 花音さんは音楽がお好きとのことで、作詞・作曲のご経験が、 この上手さの秘密の一つなのでしょうか‥? やはりジンカイは純愛がよく似合う。お互いをもう、好きという言葉では計れないほどに 求め合う二人。激しく奪うような求め方ではなく、もどかしくなる程、ただただ相手を 大切にしか出来ない二人。 ジンの独白でとくに号泣しました。カイトさんの幸せを祈っているけど 無理かもしれないって。「なんせ、俺がいないから」って‥‥。 自分の幸せと相手の幸せはイコールだと、二人ともよく分かっている。 カイトさんしかジンを幸せに出来ない事を、ジンしかカイトさんを幸せに 出来ない事を、よく分かっている。特にジンは。 あぁー‥‥書いててまた泣けてきた‥‥。 自ら命を絶ったカイトさんは、うまく天国へ、ジンの元へ行けたでしょうか。 でもそれも、きっと問題ないのです。カイトさんが天国に行けなくても 今度はジンがちゃんと追いかけていくから。それがどんな場所でも きっとカイトさんを見つける。 そして「お前のせいでこんな場所まで――」って怒ってカイトさんを どつくかもしれませんね^^ 花音さん、素敵な小説をいただき本当にありがとうございました‥‥! (041121) →トップ |