「DRUG STORE HUNTER×HUNTER」-04 ------------------------------------------------------------------------ 「くす・り‥‥?」 目の前に差し出されたカプセルを見つめてジンが呟くのにこっくりと頷く。 あの後、持ち帰った薬を詳細に分析した。 大して期待はしていなかったが値が張るだけのことはあり思った以上の効用が 確認できて副作用もないようだ。 カイトは薬品に関して、特に薬草については一通り以上の知識を身につけているが 自然の植物ではよほど希少なものでない限り、こうはいかない。 化学物質で調合された薬なら更に強力なものもあるだろうがハンターの世界は狭い。 裏のルートを使ってもどこで誰に見つかってどんな噂が立つかわからない。 思わぬ拾い物したとその日からずっと隠し持ち、特にジンに会うときは肌身離さず 携帯していた。 「お前‥‥しばらく会わない内にそういう趣味になってたの?」 ジンが呆れた声を出す。 「はぁ‥‥そういうわけじゃないんですけど‥‥」 それは誤解だと叫びたいが致し方ない。 「別にいいけどな。飲むなら早く飲め」 「いや、そうじゃなくて‥‥」 「飲むんじゃないのか? あぁ‥‥下に使うのか。早く寄こせ」 「‥‥違いますってばっ!!」 ジンが手を伸ばすのに慌ててカプセルを引っ込める。 「何なんだよー全然わかんねぇ」 明らかに焦れている。 「これはっ‥‥だから俺じゃなくてジンさんが‥‥」 「え、俺? 俺が飲むのか?」 「はぃ‥」 その瞬間、ジンが固まった。 呆然と口を開け、強張った体は身じろぎもせず見開かれたまま虚ろに なった目は何も見ていない。 「ジン、さん‥‥?」 カイトが呼びかけるがギラついていたオーラはみるみる萎み 見る影も無い。緩慢な動作でぺったりとあぐらをかくと、そのまま 項垂れてしまった。 「あの、何か俺、悪いことでも‥‥」 「ああ‥‥いや、こういう事ははっきりさせといた方がいい。 言いにくい事言わせて悪かった。 しかし‥‥やっぱりその、ショックなもんだな」 「はぁー!?」 「ありがとな」 苦い笑みを浮かべて再びカプセルに手を伸ばす。 「ちょっ‥! なんか勘違いが‥‥」 「勘違いも何も、強壮剤だろ? お前も大人になったからな。生半可なことじゃ満足できない体に しちまったのは俺のせいでも‥‥」 「だーかーらーっ!!人の話を最後まで聞けっっ!!!」 「‥‥んだとぉー!? さっきから聞いてんのに、おめぇが シャッキリ話さねぇんじゃねぇかっ!!」 「話す前にジンさんが勝手に早合点するんじゃないですかっ!!」 「だってそれ以外考えられねぇだろ!? お前が飲むんでもなく強壮剤でもないんなら何なんだよっ!?」 「‥‥‥‥‥‥」 「‥‥ほら、やっぱりお前の歯切れが悪いんじゃねぇか」 「‥‥‥‥これは‥‥だから、すごく‥‥‥良くなるんです」 「‥‥‥は?」 「ジンさんが、すごく良くなるんです‥‥」 ジンは眉を寄せ、しばらくカイトの真意を計るように見つめていたが やがて白けた顔になる。 「いらねぇよ、そんなもん」 「え、でも」 「いらねぇって、必要ない。だって今のまんまですっげぇ気持ちぃもん」 「‥‥‥‥‥」 「お前にも分かりそうなもんだがな。お前がいい時は俺もいいんだぜ? そんな薬を使わなくったって、お前のあ‥」 「わーわーわーわー!!!分かりましたっ!!もういいですっ!!」 肩で息をする。 疲れた‥‥‥早く眠りたい‥‥・。 「‥‥ったく、散々焦らして楽しいことってそれだけかよ」 ジンが溜息をつく。 「はぁ、すみません。けどやっぱり、いいに越したことはないっていうか 俺明日、健康診断だからあんまり疲れると‥‥」 「要はとっとと良くなって早くイけってことか?」 「そんなハッキリ‥‥‥まぁ、そうですけど」 自分でも妙な話だと思うが、薬を薬と認識させた上でジン本人に飲ませる為の 嘘を他には思いつかなかったのだから仕方ない。コッソリ食物に混ぜるなどの 方法はバレる可能性も高いし成功したとしてもその後が恐ろしすぎる。 ベッドの上で向かい合ったまま、何となくお互い黙り込む。 作戦は失敗‥‥明日の健康診断は諦めるか。 そう思った時、カプセルを摘んだままの手を引き寄せられ 指先にザラリと舌の感触がした。 手を見るとカプセルが消えている。ジンの喉仏が動く。 「のん・だ‥‥」 「ああ、飲んだ。満足だろ?もういいよな?」 こっくりと頷く。 「全く何考えてんだか‥‥。 いいとこでイッちまっても責任持たねぇからな」 「ジンさんなら‥‥大丈夫‥‥‥」 「あ、やっぱり?」 ニッカリと笑って性急に圧し掛かる。 鎖骨に歯を当てられ、思わず仰け反った。 →Next                       (040520) ------------------------------------------------------------------------ →トップ