「約束」-01
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その敵は、いつも以上に強かった。
易々とカイトの間合いに侵入し、鋭い攻撃を仕掛けてくる。
紙一重でその突っ先をかわした後、一気に身をかがめて
相手の死角に身を隠し、膝裏に渾身の力を込めて蹴りを入れる。
敵の態勢が崩れた。
身を起こしながら拳に力を込める。
捉えた!
思った瞬間、相手の上体が視界から消え去る。
しまっ・・・・!
バック転をするように後ろに手をついた敵の左足は
カイトには見切れないスピードで正確にカイトの顎を捉えていた。
「いい線いってたんだけどな」
頭上からジンさんの声。わずかに笑いを含んでる。
顎をさすりながら上体を起こすと、脇の下に片手を入れて
立ち上がらせてくれる。
「あの蹴りがな、ちょっと態勢をくずさせるだけでよかったんだ。
勢いよく後ろに倒れさせたから、かえって相手にスピードと
バネの力を与えちまった。
加えてお前の攻撃もほんの一瞬遅くなる」
「はい」
「ん、でも悪くなかったぞ。
これ以上の敵になると、念を使わないと無理だな」
森の中。
今カイトが戦ったのは、ジンがカイトのレベルに合わせて
作り出すイメージだ。
体術のみで戦うイメージ、念を使うイメージ。
その日の修行に合わせて様々な敵を作り出すから
勝率は2割に満たない。
だがそんなマンツーマンの修行が、いつも出来るわけじゃない。
ジンはハントに忙しく、そのほとんどにカイトも同行する。
まだ出来ることはあまり無い。
大抵は宿泊場所で待機して、連絡係や食事係の使い走りだ。
しかし学ぶことは多いし、それ以外の時間は基礎体力の向上と
練の訓練にあてていた。
「だいぶ実戦に慣れてきたな。さっき見た練も悪くない。
明日は水見式をやって、そろそろ発を教えるか」
カイトの顔が、パッと輝く。
しかし次の瞬間には笑顔を収め、口元を引き締める。
自分はまだまだ。
発展段階でイチイチ浮かれてちゃ、強くなれない。
そう自分を戒めている顔だ。
ジンはそんなカイトの頭をくしゃりとやると
「お前は何系かな、楽しみだな。
発を覚えたら、1度お前をグリードアイランドに連れて行こうか。
発売したのはいいが、まだ改善しなきゃいけないところは沢山あるし
お前にモニターになってもらう。
強くなれるぞー・・・。」
何のことか分からずジンを見上げると、ジンはそのままカイトの頭を
ポンと軽く叩いて、家へと向かう道に促した。
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