「イエティ伝説殺人事件」-02
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ここはネィパル地方、ヒマールヤ山脈の麓の村。
早朝に家を出たジンとカイトは、夕方には宿屋に着いていた。
あらかじめここに調査機材一式が届くよう手配にも抜かりはない。
一式といっても、ハンディサイズのビデオカメラとモニター、あとは数枚の
防寒着くらいのもの。
ビデオカメラの耐熱は下は-80℃から上は140℃まで、防水は当然だが
あらゆる衝撃に耐え微細な粒子の侵入も許さない優れものだ。
望遠のレンズにも特殊加工が施され、寒さや衝撃で割れないように
本体と同じ耐久を備えている。
その他、コンパスや麻酔など普段のハントでも必要なものは
家でカイトが揃えて小さなリュックにコンパクトにまとまっている。
2人分の寝袋と非常食はジンのボクサーバッグに入っているはずだ。
カイトが装備の点検するのをジンは傍らで覗き込んでいる。
そしてそれが終わったとみるや
「準備万端か?出られるか?」
と聞いてくる。
「でもジンさん、もう日が暮れて・・・それに今夜は吹雪きそうですよ」
「そりゃまぁそうだが、イエティは夜行性かもしれないし。
なんといっても雪男だ。
吹雪の夜なんか、浮かれて外で踊ってたりすんじゃねー?」
そうかもしれないけど・・・・吹雪きの中にイエティがいても
見つけられないんじゃないかなぁ・・・。
いくら高性能のカメラでも撮影は難しいだろうし。
カイトはハントで寒い土地を訪れたのは初めてじゃないし
冬山にも何度か登っている。
しかし吹雪きでしかも夜というのは経験がない。
いくら暗闇で目が見えるといっても、吹雪では物理的に視界が遮られるし、
夜とあっては方向もわからない。小さなコンパスを手放してしまえば
それ即ち死に直結ということだ。
大丈夫かな?
「よし、行くぞー。白い煙幕になぶられながら、夜の闇を歩くっては
なかなか気持ちがいいものだぜ。ちっと寒いがな」
・・・大丈夫だな、全く問題ないんだな。
ジンさんと一緒だというのに、俺は何を心配してたんだか。
心配性の自分がちょっと可笑しくなったが、それを顔には出さないで
「はい」と返事をすると、カイトはリュックをかついで立ち上がった。
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